RESEARCH

RESEARCH

大村研究室では、水とガスからできる氷のような結晶「クラスレートハイドレート」を研究しています。物理化学的な基礎学術から実機を想定した応用研究まで幅広い研究活動を展開しています。

WHAT IS HYDRATE?

ハイドレートとは?

低温・高圧の条件下で、水分子とゲスト分子から生成する結晶

水分子が水素結合でつながり、かご状構造(ケージ)を形成

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かごの中にゲスト分子が包蔵される

水分子が作るかご状構造の中に水以外の物質を封じ込めて結晶化した物質をクラスレートハイドレート(以下ハイドレート)と呼びます。そのかごにメタンや窒素、二酸化炭素などのガスが包蔵されることで結晶構造が安定します。

ハイドレートは低温・高圧の条件下で生成し、自然界では深海の海底や南極の氷の中に存在が確認されています。

水分子が水素結合でつくるかご状構造の中にゲスト分子が入ったクラスレートハイドレートの構造図
クラスレートハイドレートの結晶構造

物性

大きなガス包蔵密度

ハイドレートは標準状態の約60倍〜200倍の体積のガスを高密度に包蔵(固形化)することができます。

大きな分解熱

分解するときに大きな熱を吸収します。メタンハイドレートの分解熱は約440 kJ/kgで、氷の融解熱(約330 kJ/kg)を上回ります。

ゲスト選択性

ゲスト分子には、かごに入りやすい分子と入りにくい分子があります。この違いを利用すると、混ざったガスから特定のガスを取り出すことができます。

RESEARCH TOPICS

研究テーマ

FUNDAMENTAL RESEARCH

基礎学術

基礎学術 01

熱力学的基礎データの測定

物質は、温度や圧力が変わると、気体・液体・固体などさまざまな状態に変化します。熱力学的データの測定では、こうした変化が「いつ・どのような条件で起こるのか」を実験によって明らかにします。私たちは特に、ハイドレートがどのような温度・圧力条件で生成・分解するのかを実験によって調べています。こうして得られる熱力学的データから、ハイドレートが安定に存在できる条件や、かご状構造に取り込まれる物質の種類によって、その条件がどのように変化するのかを明らかにします。

アルゴン+シクロペンタン+軽水(黒丸)と重水(白丸)のハイドレート相平衡条件。横軸は温度 T/K(282〜298 K)、縦軸は圧力 p/MPa(0〜5 MPa)
アルゴン+シクロペンタンハイドレートの相平衡条件(軽水と重水)
丸山ら(2026年)

主な論文

基礎学術 02

結晶成長観察

様々なハイドレート技術を実用化し社会実装するためには、生成容器内でハイドレートがどこで・どのように成長するのかを捉えることがカギとなります。ハイドレートが生成する温度・圧力条件によって、ハイドレートの結晶はまるで氷の結晶のように様々な形態をとります。こうした形態学的な変化を明らかにすることでハイドレート生成プロセスの実装を目指します。

t = 13 s、15 s、27 s の3枚の写真。ハイドレート結晶が時間とともに成長していく様子(T ex = 280.1 K、ΔT sub = 6.3 K、P = 0.377 MPa、スケールバー 10 mm)
時間とともに成長するハイドレート結晶
闕山ら(2026年)

主な論文

基礎学術 03

界面物理

ある相が他の相に接触している境界面を「界面」といいます。この界面には、面積を小さくしようとする性質があり、その力を「界面張力」といいます。水滴が丸くなったり、コップの縁を少し超えて水を注いでもこぼれずに盛り上がったりするのは、この性質によるものです。私たちは、温度や圧力、液体の組み合わせ、液体に溶け込む気体の種類によって、界面張力がどのように変化するのかを実験によって調べています。界面張力は、洗剤や化粧品などの身近な製品の開発から、天然ガスの生産や水素の貯蔵といったエネルギー技術の開発まで、幅広い分野で役立つ物性値です。

懸滴法で撮影した液滴
液滴の形から界面張力を求める(懸滴法)

主な論文

APPLIED RESEARCH

応用研究

応用研究 01

固体炭酸食品の開発

CO2を用いた炭酸食品は嗜好性食品として親しまれていますが、現在普及している食品はコーラやサイダーといった清涼飲料のみであり、アイスクリームといった固体の炭酸食品は普及していません。これはCO2ガスが水に対しての溶解度が大きいのに対して、氷に対しての溶解度が極めて低いことに起因します。ハイドレートは優れたガス包蔵性があることが特徴の一つであり、CO2ハイドレートは固体の炭酸食品への応用が期待されています。

ハイドレートを食品へ応用するためには、安定した大量生成技術の確立に加え、砂糖や甘味料などを含む食品用溶液中でハイドレートを生成させる技術、そして保存性に関する知見が必要となります。大村研究室では、CO2ハイドレートの大量生成手法の確立と、砂糖や甘味料を含む溶液中におけるハイドレートの成長挙動と保存性の解明を目指して研究を進めています。

ワイングラスに入れたCO2ハイドレート
ワイングラスに入れたCO2ハイドレート
長島ら(2017年)

応用研究 02

カーボンキャプチャー技術の開発

製鉄・セメント業における二酸化炭素排出量は国内の製造業全体の10%以上を占めているため、製造能力を維持しつつ実質的な排出量を削減するCO2回収技術が求められています。大村研究室ではCO2がかご状構造に取り込まれやすい物性に着目し、混合ガスからCO2を選択的に回収する手法の開発を行っています。水と混合ガスから生成するハイドレートを用いることで、環境への影響が小さく、既に推し進められているアミン法と同等のコストであることが期待できます。

ハイドレート連続生成装置の操作盤
ハイドレート連続生成装置

主な論文

応用研究 03

蓄熱材料の開発

大きなビル等で採用されている氷蓄熱式空調システムでは、電気料金が安い夜間に氷をつくり、蓄えた冷熱を昼間の冷房などに利用しています。しかし、28℃の室温を維持するために必要な15℃の冷風をつくる熱源の最適な温度は10℃前後であり、0℃の氷では温度が低すぎるという課題があります。分解温度が10℃前後のハイドレートを氷の代わりに用いることで、既存の氷蓄熱と比べて冷凍機の効率を3割程度向上できると期待されます。ハイドレートはゲスト物質の種類によって分解温度が異なるため、一般空調の他にも分解温度が2〜8℃のハイドレートはワクチンの貯蔵、30℃前後ではEV用リチウムイオンバッテリー・データセンタ冷却など、幅広い用途への応用が期待できます。

蓄熱材料のハイドレートを生成した試験管
試験管の中で生成した蓄熱材料のハイドレート

主な論文

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